AIエージェントとは何か ― 「AIに聞く」から「やらせる」へ

AIエージェントとは何か ― 「AIに聞く」から「やらせる」へ

AIエージェントとは何か ― 「AIに聞く」から「やらせる」へ

本記事で解決できるお悩み

  • 生成AIやCopilot、RPAと「AIエージェント」の違いがよくわからない
  • AIエージェントという言葉を聞くが、実務で何が変わるのかイメージできない
  • 「AIに任せる」と言うが、どこまで任せてよいのか判断がつかない

That’s one small step for a man, one giant leap for mankind. (これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である)

― Neil Armstrong

はじめに:なぜ今、「AIエージェント」なのか

生成AIは、ここ数年で一気に身近な存在になりました。2025年にはChatGPTの愛称「チャッピー」が流行語となり、多くの人が日常生活の中でちょっとした疑問を尋ねたり、日常生活のアドバイス役をしてもらったり、雑談役になってもらったりしています。一方で、企業においても生成AIの導入や利活用は、ますますIT戦略のなかに位置づけられるようになってきました。文章作成、要約、翻訳、アイデア出し。「考える」「答える」という領域において、AIはすでに人間の強力なパートナーになっています。

一方で、実務の現場からは、こんな声もよく聞こえてきます。曰く、「AIは賢い。でも、仕事は終わらない。」と。それはなぜでしょうか?

ここで登場するのが、「AIエージェント」という考え方です。

1. そもそも「AIエージェント」とは何を指しているのか

AIエージェントを一言で言えば、「目的に応じて、自律的にタスクを実行するAI」です。生成AIが「質問に答える存在」だとすれば、AIエージェントは「仕事を進める存在」です。もう少し具体的に言い換えると、生成AIは「指示を受けて、その場で回答する(単発)」だけなのに対し、AIエージェントは、「目的を受け取り、複数のステップをまたいで処理を進める(連続)」ところまで実施します。

たとえば、営業会議の議事録をAIに要約させたとします。確かに、読みやすく整理された要約はすぐに手に入ります。ですが、そのあとに必要な「関係者へのメール送信」や「タスクの登録」「次回会議の設定」といった作業は、結局人間がやることになります。

つまり、生成AIは「答えは出すが、仕事は終わらせない」のです。しかし実務では、資料作成、共有、承認、入力といった一連の作業があって、初めて仕事は完了します。

では、AIエージェントならどうなるでしょうか。同じ「営業会議のフォロー」を例にすると、AIエージェントは次のように動きます。

会議データを読み取り、要点を整理する。関係者を特定し、メール文面を作成して送信する。さらに、決まったアクションはタスクとして登録され、次回会議の日程まで仮押さえされる。人間がやると30分かかる一連の作業を、AIエージェントは指示一つで進めてくれます。

こうした例を見ると、「それなら全部AIに任せればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、話はそう単純ではありません。

AIエージェントは、あくまで「仕事を進める存在」ではありますが、「何をやるべき仕事として定義するか」までは決めてくれません。会議のフォローを自動化するにしても、「どこまでを正式なタスクとして扱うのか」「誰の確認を挟むべきか」「例外が出た場合はどうするのか」といった判断は、依然として人間側に残ります。

つまり、AIエージェントは「仕事を丸ごと代替する存在」というよりも、仕事の流れの中に入り込んで、一部を引き受ける存在だと考えたほうが実態に近いでしょう。実態に近い、というより、それ以外の期待をするとだいたい失敗します。

2. 生成AI・Copilotとの違いはどこにあるのか

ここで一度、生成AIやCopilotとの違いを整理しておきます。

生成AIは、「考える」「答える」ことが得意です。こちらが問いを投げれば、即座にそれなりに筋の通った答えが返ってきます。

Copilotは、その生成AIを業務ツールの中に組み込み、人の作業を横で支援する存在です。文章の下書きを出したり、入力を補助したりと、「人が作業する前提」を崩しません。

一方、AIエージェントは、その前提を少しだけずらします。

AIエージェントに投げる指示は、「この資料を直して」ではなく、「この案件を前に進めておいて」になります。この指示の粒度の違いが、両者を分けるポイントです。

生成AIやCopilotでは、作業の主語は常に人間です。AIエージェントでは、一定の範囲において、主語がAI側に移ります。この違いは小さく見えて、実はかなり大きい変化です。生成AIが本質的には「AIに聞く」ものだったのに対し、AIエージェントは文字通り「AIにやらせる」ものだといえます。

3. RPAとの違いはどこにあるのか

AIエージェントの話をしていると、必ずと言っていいほど出てくるのが、「それってRPAと何が違うの?」という問いです。特に、すでにPower Automate (Power Automate Desktop を含む)を使っている企業であれば、「もう自動化はやっている」という感覚を持っている方も多いでしょう。

この問いはもっともです。実際、AIエージェントとRPAは、どちらも「仕事を人の代わりに動かす」という点では共通しています。

ただし、両者が得意とする領域は、はっきりと異なります。

① RPAは「決められた手順を、正確に繰り返す」もの

RPAは、基本的に手順が固まっている業務を自動化するための仕組みです。たとえば Power Automate では、「メールが届いたら添付ファイルを保存する」「承認依頼が来たら、決まった順路で通知を送る」「定型フォーマットのデータを転記する」といった処理を、安定して自動化できます。これはRPAの大きな強みです。

一方で、RPAは「判断」をあまり得意としません。途中で例外が出たり、入力内容が想定と違ったり、業務ルールが微妙に変わったりすると、途端に止まります。

そのため、RPAを運用している現場では、「ロボットの面倒を見る人」が必要になるケースも少なくありません。

② AIエージェントは「状況を見て、次の一手を考える」

AIエージェントは、ここで少し違う振る舞いをします。

AIエージェントは、「この業務を回しておいて」という目的ベースの指示を受け取り、「今の状況はどうなっているか」「次にやるべき作業は何か」「例外が出たらどう判断するか」を、一定の範囲で自分なりに考えながら進めます。

もちろん、すべてをAIに任せるわけではありません。重要な判断や最終確認は、人が介在する設計が前提になります。

ただ、「止まったら人が全部考え直す」のではなく、「止まりそうなところまでAIが持ってくる」点が、RPAとの大きな違いです。

③ Power Automateは「境界線」に立っている

ここで面白いのが、Power Automate の立ち位置です。

Power Automate は、もともとRPA・ワークフロー自動化の文脈で使われてきました。一方で近年は、CopilotなどのAI機能と組み合わさることで、「判断を含む自動化」に少しずつ踏み込み始めています。

たとえば、「内容を読んで処理を分岐する」「文章から要点を抜き出して次の処理につなぐ」といったことが、以前より現実的になってきました。

ただし、現時点の Power Automate は、AIエージェントそのものではありません。どちらかと言えば、「AIエージェントが動くための足場」「実行レイヤー」としての役割を担っている、と捉える方がしっくりきます。

④ RPAか、AIエージェントか、ではない

ここで重要なのは、「RPAか、AIエージェントか」という二者択一ではないということです。現実の業務では、

  • 判断がいらない部分はRPAで固める
  • 判断が必要な部分をAIエージェントに寄せる
  • 最終責任は人が持つ

という組み合わせが、もっとも自然です。Power Automate は、まさにその接続点にあります。

だからこそ、既存のRPA資産を持つ企業ほど、AIエージェントの話は無関係ではないのです。

4. AIエージェントは魔法ではない

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。

AIエージェントは、魔法の存在ではありません。導入すればすべてが自動化される、という話でもありません。

業務が整理されていなければ、AIエージェントは何をしていいかわかりません。目的が曖昧であれば、見当違いの動きをします。責任の所在が決まっていなければ、実運用には耐えません。

生成AIが登場しても、「設計」と「運用」の問題が消えなかったのと同じです。むしろ、AIエージェントによって、その重要性はよりはっきり可視化されます。

まとめ:AIエージェントは「任せ方」の問題である

AIエージェントとは、特定の製品名や機能名ではありません。それは、仕事をどこまで分解し、どこまでをAIに任せるのかという問いの別の言い方です。

「AIに任せる」とは、丸投げすることではありません。任せる範囲を設計することです。生成AIが「考える」ことを助け、AIエージェントが「動かす」ことを助ける。その結果、人は、判断や例外対応といった、本来人が担うべき仕事に集中できるようになります。

AIエージェントは、その線引きを避けて通れなくする存在だと言えるでしょう。まずは、日々の業務の中で「この作業、任せられるかもしれない」と思えるものを一つ見つけることから始めてみてください。


筆者:W.S.

ITガバナンスおよび市民開発推進を得意領域とするコンサルタント。中堅〜大手企業のIT統制設計・DX推進支援に従事。
個人開発者としてJavaScriptおよびFirebaseを用いたWebアプリ開発にも取り組み、開発現場と統治設計の両面からDXを研究している。
同志社大学大学院経済学研究科博士後期課程修了単位取得退学。


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